家へ帰ろう
ようやく到着した東京行きの列車の車内は、スカスカだった。
進行方向に座り、窓の桟に肘をつく。
ほんの一瞬。
窓の外に目をやり、すぐに見るのをやめた。
だから……こんな風景。
俺は、うんざりで飽き飽きしてるんだって……。
心の中ではき捨てる。
鞄の中に入れてきた、暇つぶしのギャグ漫画。
もう、何度も読み返し、その度に可笑しくて笑える漫画だった。
東京までは、まだしばらくかかる。
俺は、パラパラとページを捲った。
けど、どんなに可笑しな表情の絵を見ても。
ふきだしに書かれたくだらないセリフを読んでも。
少しも笑えない……。
どうしてだか、少しも笑えないんだ。
俺は、小さく息を吐き、漫画を鞄に戻した。