家へ帰ろう


外の景色に目をやることもなく、座る自分の足もを見つめていたら、ケツのポケットに入れていた携帯が軽快な音楽を奏でた。
見ると、そこそこ仲良くしていたクラスの奴からだった。

[ お前。本当に東京行くの? ]

その文から、少し小馬鹿にしたそいつの声と顔が浮かんだ。
俺は、すぐに返信をした。

[ 行くよ。もう、向かってる。 ]

すると、すぐに返信がきた。

[ マジでー! 芸能人にでもなって、自慢させてくれよ。 ]

からかうようなその文章にカチンと来た。

「誰が芸能人になるって言ったよっ」

小さくはき捨て、その文に返信はしなかった。


俺は、ただっ。

ただ……。


怒りに任せたけれど、後が続かない。


ただ、どうしたいんだろう……。

何になりたくて。
何をしたくて。
この町を出て行くのか。

わかんねぇ。
なんも、わかんねー。

ただ、ここに居たくない。
居たくないんだ……。


頭の中には、昨日の酒に酔った親父の座った目と赤黒い顔。
母親の、心配そうな顔が浮かんでくる。


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