家へ帰ろう
この片田舎じゃ、実家の農家を継ぐか、せいぜい農協の職員や車の整備工になるくらいしか職がない。
そんなところに居て、なんになる。
毎日毎日、畑仕事に向かうしかない両親を見ていればわかる。
休みもないから旅行もしない。
毎日いじる土のせいで、爪や指は真っ黒だ。
日差しに当たる肌だって、ガサガサで浅黒い。
唯一の楽しみが、毎日の焼酎なんて最悪じゃないか。
こんな場所に、楽しい事なんかひとつもない。
夢も希望もない。
でも、東京へ行けばきっと……。
形のない夢や触れることの出来ない希望を煌びやかに想像し、俺は一人列車に揺られる。