家へ帰ろう


どっちへ向かっていいのか判らず。
とにかく、一番人が流れていく後ろをくっ付いていった。

改札を出ると、また人と音。
そして、タクシーやバスの排気ガスで汚れた空気が俺を取り囲んだ。


ほんの一瞬。
田舎の緑を、思い出した。


あの果てしなく遠くまで見渡せる、畦道のことを。


そんな景色には飽き飽きしていたはずなのに、浮んできたことに苛立ちを感じて振り切った。


とりあえず……どうしたらいいんだ……。
金は、少しでも節約しなきゃいけない。


荷物を右肩に背負って、少しの間考えていると、視界に入る周囲のものを見渡し、無意識に溜息が出た。
そのすぐ後には、腹が鳴った。


考えてみれば、朝家を出た時。
いつもなら、しっかり食べる朝飯も無視して出てきたんだった。
突っ張らずに食べてくればよかった。

母親が持たせようとした弁当のおにぎりさえも、受け取らずに飛び出したことを少しだけ後悔した。


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