イジワル上司に恋をして
「すげぇイタイ奴」
目の前に影が出来たと思ったら、次のことを考える暇もなく“そう”なってた。
鼻腔をかすめるタバコの残り香も、後頭部に感じる大きな手の感触も。
言葉を発せない状態にある自分の唇も。
それは確実に、『夢』でも『妄想』でもなんでもなくて、『現実』だ。
「オマエの妄想に付き合っただけ」
たった数センチ離れた位置で開いた、その男の唇からは「くっ」と漏らした笑い声とそんな言葉。
「アタリ、だろ?」
――――ふっ…………ざけんなっ!!
*
< 1 / 372 >