イジワル上司に恋をして

『あー、ごめん。なんかすごい想像通りの鈴原さんで。今、平気?』
「え……と。はい、少しなら」


「想像通り」? それってどういうことだろう。ああ、いやでも、それにしても本当にああいうの恥ずかしい。
今度から気をつけよう!


電話なのをいいことに、思い切り顔を赤くして、顔を小さく何度も横に振る。そうしないと、わけもなく走り出してしまいたいくらいに今の自分への羞恥がひどい。


『いや……今日、平日だからわりと都合いいかなー?と、思った次第です』


耳元で聞こえる優しく丁寧な声。敬語はわざと今だけ使ったっぽいけど、そういう話し方ってわたしは好きだ。

この辺りから、わたしは西嶋さんとの電話だけに気を取られていて、側に誰かがいるとか、そんなことに気付きもしなかった。


「今日……ですか」


さっきのブライダルの社員さんたちじゃないけど、試食イベントの疲れが結構きてる。
それに、汗かいたし、今日の服装も……ああ! 全然可愛い感じのじゃないし!

だけど、何度もタイミング逃してる上に、何度も誘ってくれてるのに申し訳ないし……!


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