イジワル上司に恋をして

明日以降の黒川の出方を想像してたら身震いする。
いつしかわたしの意識は、その明日からの黒川に捕らわれていて。
目の前の二人のことを、大して注意深く見ていなかった。

そんなときに、毎日聞いてる低音ボイスが耳に届く。


「鈴原と、同じ方向でしたか?」


ちょっと、黒川のやつ、なにを言う気……?

ハラハラと動向を見守っていると、西嶋さんが少しの間の後答えた。


「……いえ。時間も時間なので、駅まで送ってただけですけど」
「ああ。そういうことで」


黒川と西嶋さんが、穏やかな口調でなにか張り合ってるように感じるのは気のせい?わたしが酔ってるから、まともに判断出来ないだけ?


オロオロとするだけで、会話の間に入ることなんかできずにいると、あの黒川が笑顔をわたしに向けてきた。


「私、彼女と途中まで一緒なんですよ。な?」


「な?」って……!!
いや、確かにそーだけど! だからってそんな爽やかに同意を求められても、その先になにが続くんですか! もはや怖すぎてどうしていいかわかんないっ。


「じゃあ、ここからは私が引き受けましょうか?」
「……え?」


ヤツが突然言い出したことに反応を示したのはわたしじゃない。
もちろん、わたしだってその言葉に度肝抜かれてるけど、あまりの予想外な流れに絶句中。

きっと今のわたしは、ぽかんとアホみたいに口を開けて、黒川を呆然と見ているんだろう。

その間にも、黒川と西嶋さんの会話は続けられるわけで……。


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