イジワル上司に恋をして
「コドモのキスだな」


昨日、家に帰ってメールを見るまで気付かなかったこと。
『あれ? そういやわたし、今日、西嶋さんとゴハン食べてきたんだった』、って。

それによって気付いたことは……不本意にも、それまで頭を占拠していたのはアイツだったということ。

そうこう考えながら、なんとか朝も起き、会社で制服に着替えて、滑り込むようにショップに降りてきたんだけど……。


「遅い」


すでに先に来ていた黒川が、ふてぶてしい態度で腕を組み、レジカウンターの台に寄り掛かっている図。

ヤツの奥にある掛け時計をチラ見すると、時刻は6時55分。
確かにギリギリと言えばそうだけど、遅刻はしてないわけだし、セーフでしょう!


「『7時』と言われたから、5分前に来たんですけど?」
「オレを待たせることに問題があるって言ってんだよ、ノロマ」


ほんっとに、コイツ、何様なわけ!?

ムキ―ッと、朝から上昇する血圧をどうにか抑えて、大人の対応を心掛ける。


「……部長は歳上だから、早起きが得意なんですねぇ」


……いや。決して〝大人な対応〟じゃなかった、コレ。

言っちゃったあとに、気付いても遅い。
でも、心の声を隠さずに言うって、ちょっと爽快感。

だけど、今、この場所にはセクハラ男と二人きりという事実を思い出し、全力で後悔する。


「――――ひゃっ……」

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