イジワル上司に恋をして

黒川の説明を聞いて、わたしはまた、棚に目を向けた。

茶葉は、開封しなければ日持ちもするってことで、ショップの在庫があるとは思うけど。でも種類によっては、在庫薄のものもあるし。
こうなってくると、冷蔵庫の中も気になる。


「そこで、だ。今から、ある程度の補充リストを作成。どこかで用意出来そうなものならそれをすぐに調達。通常の発注だと、早くても明日……大体が明後日の着になるから」
「補充リスト……え? それって」


無意識に復唱すると、自然とわたしは自分を指さしていた。
それを見た黒川が、溜め息を吐いた。


「バカか。当たり前だろ? そのために呼んだんだっつーの。ああ、それと。補充の方が終わったら、発注作業もやっとけ。あと、こっちの備品もな」
「え、えぇ? でも、わたし、ブライダルの方の発注したこと……」


思わず、口応えのようにぽろりと出てしまった。

いや、だって! 『嫌』とかそういうんじゃなくて、不安だったから。こんな忙しい中、それに関わるような発注だなんて!

すると、心の中を読まれたかのように、淡々と返される。


「他の奴らが〝忙しいから〟、手伝えって言ってんだ。2年も居れば、備品くらい想定つくだろ。それに、このあたりのモンは、昨日ほぼひとりでこなしてたんだ。オマエが一番、なにが、どのくらい必要なのか、予測出来るだろーが」


そう言われてしまえばそれまでだった。

確かに、そう。
全員の注文を受けてたのはわたし。昨日、なにをどのくらい消費したのかを知るのもわたし。
……でも、そんな急に?!
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