イジワル上司に恋をして
「え。あ、な、なんかすみません! ありがとうございます……」
そういうのが精いっぱい。
前もって約束をしてたって、あわあわとしてしまうであろうわたし。だから、こんな突然のことなんかに、当然対応出来るわけなくて……。
だって、いくらわたしだって、想像なんかしてなかったよ!
……ていうか、最近忙しくて、ゆっくり妄想なんてするヒマなかったし!
ちょっとの休憩でも、頭ん中に出てくるのはアイツ……。
そこまで考えてハッとする。
と、同時に、西嶋さんが口を開いた。
「――ああ。まだ、仕事中でしたね。すみません」
――――え?
なんで、急に口調が……。
「ええ。申し訳ないですが、少し、お待ちいただけますか」
背後から発せられたその声に、息が止まる。
振り向き、目を大きくして見上げると、黒いスーツをカッコ良く着こなして、疲れなんか1ミリも表情に出してない……黒川。
こ、コイツ! いつの間に後ろにいたの? 西嶋さんは、ずっと気付いてたの? だって、驚く顔なんかしてなかったし!
一人固まって黒川を見てると、ちらっとわたしを見たあとに、西嶋さんへと視線を移す。
すると、西嶋さんが口を開いた。
「はい。そのつもりです。ただ少し、あなたとお会いしたかったから」
「……私と?」
「はい。少し、気になっていることがあって」
「『気になっていること』?」