イジワル上司に恋をして

「……はい。たぶん、僕の予想していた通りだと思います」


「予想」……?


「それで? 仮にあなたの〝予想〟が当たっていたとして。どうしようと?」
「どうするもなにも、ないですけど……。ああでも、ひとつだけ言わせてもらえるなら」
「どうぞ?」


な、なになに? どういうこと?
話の流れが全く見えないんだけど、でもなんか、二人とも丁寧な口調に穏やかな表情をしながら、少し険悪なムードを醸し出してない?!

二人の間を取り巻く空気が、決して和やかなものじゃないとだけ察すると、たちまちこの先どうなってしまうのか……怖くなる。


「職権乱用は、やめてくださいね」


……なっ……! 「職権乱用」って……まさか、西嶋さん、この間少し話をしたときのことを言ってる?!
すごい親身になってくれる人だっていうのはわかってたつもりだけど、まさかまさか……! 直接職場(こんなとこ)に来てまで?! いい人にも程がありますよ! 西嶋さん!

相変わらずの彼の優しさなのだと思って、恐縮する。と、同時に、背中に感じるオーラが半端ない。

恐る恐る黒川を確認する。
目に飛び込んできたヤツの顔を見て、凍りついてしまった。


「今の世の中、そんなことをしたら、すぐに訴えられて困るのはこちらですから。ご心配なく」


超笑顔でそういうことを言われると、渋い顔で言われるよりも何百倍も怖いんですけど……。
……ていうか。なんか、西嶋さん相手に、少し〝素〟が出てない?
表情とか言葉は物腰柔らかい雰囲気のままだけど。でも、言ってることとか、なによりそのなんとも言えない、威圧感たっぷりのオーラがそれを物語ってる気が!

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