イジワル上司に恋をして
「ほっとけよ」


「……はぁー」


久々の休日だと言うのに。
天気も良くて、お出掛け日和だと言うのに。

「はぁ」と、再び何度目なのかももうわからない溜め息を吐いて、わたしはひとり、アパートにいた。

連日の疲れと、寝る時間が遅めだったのもあって、目が覚めたのは午前10時過ぎ。それでも、まだ午前なだけいいか、なんて思いながら。
わたしはホットミルクを淹れて、丸いラグに腰を降ろす。
窓の外で、ゆっくりと流れる雲を見つめ、カップで手を温めながらボーッとする。

決して寒くはない季節なのに、ホットミルク。

真夏を覗き、大抵朝は温かい飲み物を欲するわたし。
けど、ホットミルクの役割はそれだけじゃなくて。
気持ちを落ち着かせたかったり、ホッとしたいときに飲みたくなるもの。

コクッと喉を鳴らして、人肌になったミルクで胃を温める。

いや。〝心を〟……かも。


『わたし……ちょっとまだ、わからない……です』


動揺していた結果、自分で口にしていた言葉はそれだった。
そして、それを受けた西嶋さんは、少し固い笑顔でこう言った。


『そう、だよね。急だよね、うん。……じゃあ、少し考えてみて』


だけど、それがわたしの本心で、素直な気持ちだったと思うから。


「……後悔は、してない……はず」


ひとりきりの部屋で、ぽつりと漏らす。
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