イジワル上司に恋をして
「そういうとこ、好きだな」


「お疲れ様でーす」


翌日の休憩後。ゆったりとした気持ちでお茶を飲み終えたわたしはショップに戻る。

ああ、すごく平和。
それは、あの目も回るような忙しさから解放されたということだけじゃなくて……。


「あーあ。今日は黒川さんがお休みで、テンション半減ですよぉ」


声を掛けた相手の美優ちゃんが、肩を落として口を尖らせながら、商品を整頓していた。


「……そう? 変な緊張感なくなるからわたしはべつに」


アイツがいたら、仕事にも集中できないっていうか。
いちいち腹立てたり、ビクビクさせられたりするから、たまにこんな日でもなければわたしがおかしくなりそうだもん。


「その緊張感がいいんじゃないですかぁ! いつ話し掛けられるかっていうドキドキ感とか。不意に笑顔を向けられたとのキュンとさせられる感じとか!」


えぇー……。それは同調できない。

苦笑いをして、若干引き気味に美優ちゃんの話に「へぇ」と当たり障りない反応をしておくけど。
まぁ確かに、あの上辺の最強スマイル向けられたらドキドキもするかも。
前に足を怪我したときの演じてたアイツには、不覚にも動揺させられたのは事実だし……。


「あんなカッコイイ人が、彼女いないだなんて信じられませんよねぇ? 彼女がいなくて休みの日なんてなにしてるんですかね?」
「え。いや……どうだろうね、それは」
「それとも。本命の彼女が今いないだけで、休日に遊ぶ相手はいるんですかねぇ?」
「いや……そんなことわたしには」

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