イジワル上司に恋をして
*
結局、場所を変えることもなく。
なんなら、わたしはデザートまでしっかりと食べて、店を出た。
「あの、やっぱりいつもごちそうになるのは……」
「ん? でも、この間は出してくれてたでしょ?」
「そうですけど、でも」
「たまにさ。これくらいしなくちゃ。〝先輩〟として、ね」
無邪気に笑って見せる姿は、確かに先輩なんだけど。
先輩だとしても、そうじゃないとしても、甘え過ぎじゃないのかな? それとも、割り切ってしまうべき?
「それじゃ、今度はなの花ちゃんがごちそうしてくれる?」
「え? あ、はい。もちろんです」
「……なの花ちゃんて、昔からちょっと鈍いよね」
「に、にぶい……?!」
今までずっと優しい西嶋さんから、ちょっと驚きの発言で目を瞬かせた。
彼を見る限り、悪意は全くないみたいだから傷つくことはしなかったけど、少しドキドキしてしまう。
「おれ、今日、『なの花ちゃん』って呼んでたんだけど、気付いてた?」
「へっ?! あ……はい。その……メールから」
「……そっか。じゃあ、『今度はごちそうして』って言ったワケもわかる?」
「えっ」
ごちそうしてって言ったことなんかに、深い意味なんかある?
食事代を出してもらって、それが心苦しいから……っていうような話の流れから、自然にそうなったことじゃないの?
目を丸くして西嶋さんを見上げると、ふっと目元を緩めて柔らかく微笑まれた。
「……それはね。別に本当に奢ってもらいたいとかじゃなくて、〝次〟の約束が欲しかったから、だよ」
結局、場所を変えることもなく。
なんなら、わたしはデザートまでしっかりと食べて、店を出た。
「あの、やっぱりいつもごちそうになるのは……」
「ん? でも、この間は出してくれてたでしょ?」
「そうですけど、でも」
「たまにさ。これくらいしなくちゃ。〝先輩〟として、ね」
無邪気に笑って見せる姿は、確かに先輩なんだけど。
先輩だとしても、そうじゃないとしても、甘え過ぎじゃないのかな? それとも、割り切ってしまうべき?
「それじゃ、今度はなの花ちゃんがごちそうしてくれる?」
「え? あ、はい。もちろんです」
「……なの花ちゃんて、昔からちょっと鈍いよね」
「に、にぶい……?!」
今までずっと優しい西嶋さんから、ちょっと驚きの発言で目を瞬かせた。
彼を見る限り、悪意は全くないみたいだから傷つくことはしなかったけど、少しドキドキしてしまう。
「おれ、今日、『なの花ちゃん』って呼んでたんだけど、気付いてた?」
「へっ?! あ……はい。その……メールから」
「……そっか。じゃあ、『今度はごちそうして』って言ったワケもわかる?」
「えっ」
ごちそうしてって言ったことなんかに、深い意味なんかある?
食事代を出してもらって、それが心苦しいから……っていうような話の流れから、自然にそうなったことじゃないの?
目を丸くして西嶋さんを見上げると、ふっと目元を緩めて柔らかく微笑まれた。
「……それはね。別に本当に奢ってもらいたいとかじゃなくて、〝次〟の約束が欲しかったから、だよ」