イジワル上司に恋をして

「由美っ……!」
『な、なんかあった?』


由美から電話をくれたはずなのに、開口一番にわたしが由美を呼んだから変に思ったらしい。
だけど、この疲弊していたタイミングに、心許せる唯一の友人の由美から電話が来たものだから。つい、縋りつくような声を出してしまった。


「由美ィ! 久々! 元気だったー?」
『「久々」って……今月アタマに会ったばっかでしょ?』
「そうだけど……無性に由美に会いたくなって」
『はぁ?』


思い返せばここ最近、自分のキャパを軽く越える出来事が立て続けにあったにも関わらず、誰にも相談せずにいた。
妄想しかしたことないわたしなんかが、ひとりで到底どうにかできるような話じゃないんだよ、うん。


『なに? なんかあったの?』
「うん。あ! ていうか、由美の方が用事あったんだよね?! 電話くれて」
『あー……まぁ、ね。あとでもいいよ。なの花が先に話ししたいんじゃないの?』
「よ、由美ぃ……ありがとー……」


そうして、由美の言葉に甘えたわたしは、途切れることなくコトの経緯を話した。

前に飲み屋で出くわしたヤツが上司で、そいつが腹黒だってこと。
西嶋さんとたまたま再会して、その流れで今や付き合う流れになったこと。

だけど、どうにもぎくしゃくとした気持ちが拭えないで、初デートを終えたこと。

ほとんどの話を正直に言った。
……だけど、黒川にキスされたことだけは言えなかった。

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