イジワル上司に恋をして
「しつこいって自分でもわかってる。だけど、黒川くんとまた顔を合わせるようになって……それに、黒川くんを尋ねて、すごく綺麗なお客さんが来たって聞いちゃったから余計にわたし……」
あー……香耶さんって、黒川が好きだったんだ。ずっと。
それなのにわたし、無神経なこと聞いちゃったんだ、この前……。
吉原さんのことを尋ねたことを思い出し、申し訳ない気持ちになる。
「今でも、答えは変わらないの……?」
苦しいくらいに切ない声。
香耶さんは一体今、どんな顔でそんなことを口にしてるんだろう?
そして、黒川はなんて答えるの……?
なかなか黒川の答えが聞こえない。
それは聞き取れないわけじゃなくて、事実、二人の間は今沈黙なんだと思う。
……いや。それとも……?
会話が途切れた理由が、ただ口を閉ざしているわけじゃなかったとしたら?
だって、アイツのことだ。
こんなわたしにすら、何度も手を出してきて。ヤツにとっては、そのくらいお手のものなのかもしれない。
しかも相手はあの香耶さん。
可愛くて、気立ても良くて。ふわりと優しい雰囲気に、大人の魅力も垣間見える素敵な人。
わたしに手ェ出しといて、香耶さんに出せないってことないんじゃないの?
勝手に推測しながら、なぜかモヤモヤとしているわたし。
この間(ま)は、もしかしたら昨日のようなキスでもしてるのかもしれない。
そう思ったら、なんでかすごくムカついた。
と、同時に、悲しくなった。
……なにをそんなにショックを受けることがあるんだ。
自問自答していたときに、ようやくアイツの声が聞こえてきた。