イジワル上司に恋をして
無理をして、ガンガンする頭痛に耐えながら笑みを浮かべる。
どうしよう。あんまり心配させるのも……かと言って、今日これからどこかへ出かけるとかはちょっとキツイな……。
由美を口実にしても顔知ってるし……もしかしたら『一緒に』ってなるかもしれないし……。
「……あんまり大丈夫そうには見えないけど。とりあえず、もう少しで終わりでしょ? おれ、送っていくよ」
「えっ……」
「遠慮しないでいいから」
「……すみません」
せっかくの休みにわざわざ来てくれたのに。
なんか、本当に申し訳ないな……。
そう思いつつも、それ以上頭は回らなくて。
まずは仕事を終わらせてしまおうと、西嶋さんに会釈をしてショップに戻る。
息遣いもやや荒くなってきた自分に気付く。
あぁ、これは結構上がってそうだな、熱……。
一人暮らしをするようになってから、こんなにひどい風邪って初めてかも……。
とにかく横になりたい。そしたら少しは良くなりそう。
ぐるぐるとした視界をどうにかごまかしつつ、レジ金を整理してあとは経理に持って行くのみ。
小銭が重たいそのお金を脇に抱えて、ブライダルの事務所にひと声掛けるために向かう。
足取りが、ふらふらしてるかもしれない。
でも、あと少し。
そう思い、俯きながらのろのろとした歩調で歩いていると、正面に影が出来たのに気付いて顔を上げた。
「……あ」
黒川のヤロウか。
なんでコイツが現れるんだろう。ああ、式が落ち着く時間か。戻ってきたのか……タイミングが悪い。
脳内では朦朧としながらもそんなことを考えられてても、実際口からは言葉が続かない。