イジワル上司に恋をして

「いや……語弊があるか。つきあってなんかいないな」
「……は?」


なによ、それ……。どっちなのよ。はっきり言いなさいよ。
……いや、待って。

そこで、わたしはふと、ある考えに到達した。
「つきあってた」と言ったかと思えば、一変して「つきあってなんかいない」と言う。
それっていうのは、もしかすると……。

上辺(セフレ)の関係……?


眉を寄せて、勝手な推察をしていたわたしに気付いたのか、ヤツは大きな溜め息を吐いた。


「兄貴のカノジョだったからな」
「……え??」


なに? どういうこと?
熱がある頭だから理解出来ないわけじゃないよね? コイツが言ってることがおかしいよね?


「あ、『兄貴のカノジョ』……? アンタとつきあう前は、ってこと?」


そうだとしたら、元カレがお兄さんってすごいやりにくいじゃない?!

すると、黒川が冷ややかな視線をわたしに向けてきた。


「ちゃんと聞いてろよ、バカ。今言っただろ。『つきあってない』って」
「???」


で、でも、最初は「つきあってた」ってアンタが……。

なぞなぞみたいな話に、何度も首を捻るばかり。


「兄貴がいたんだから、つきあうもなにもねーだろ」


……っていうことは?


「……お子様には難しすぎたな」


なんの反応もしないわたしに、失笑するように黒川が吐き捨てた。

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