イジワル上司に恋をして
「なんで、否定しないの」


医務室を出た足でそのままロッカー室へと向かい、着替え終える。
ベッドの脇に、わたしの私物バッグが置かれていたから……。きっと……いや、絶対、アイツが持ってきたんだろうけど。

パタンとロッカーを閉め、ふと、アイツの言葉を思い出す。


「あ……」


そうだ。西嶋さん!
ロビーで待ってるかもとかなんとか言ってなかった?
場所がどこであれ、閉店直後に来てくれて、「送る」って言ってたことは確かだし。きっと心配してどこかに……。

ちょうどそのタイミングでメールが来た。


【大丈夫? 連絡待ってる】


ああ。なんかすごい振り回しちゃってるな、わたし。
自己嫌悪に陥りながら、でもまずは連絡をしなきゃと携帯を耳にあてた。


『もしもし! なの花ちゃん?!』


メール直後ということもあるからなのか。……いや、西嶋さんは優しいから、それだけ心配してくれてたんだ。
ワンコールにも満たないくらいの速さで電話が繋がり、間髪入れずに声がした。
そんな痛いくらいの優しさが、弱ってる心に重くのしかかる。


「はい。あの、なんかすみません、本当……」
『大丈夫なの? もう』
「あー……と、まだ、ちょっと」
『今、どこ?』


エレベーターを降りて、ロビーを見る。
すると、見渡せるような位置に彼は立って、周りを見ていた。


「……左です」


立ち止まり、ひとこと伝えると、ゆっくりとその顔がこちらに向けられる。
スピーカーからと、正面からと。同時に声が耳に届いた。

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