イジワル上司に恋をして


近くを走るゴミ収集車の音で目が覚めた。
もぞもぞと布団の中で少しずつボーッとした頭を覚めさせていく。


……寝た。でも、寝過ぎなのかまだ寝れそう……あ。ていうか、ゴミ間に合わなかったじゃん。


そこまで考えられるようになったら、むくりと体を起こした。
自分の姿を見てみると、昨日着ていた服のまま。
軽く頭を掻きながら、布団から足を出す。

熱もすっかり下がって頭はすっきりしてるけど、その分体は汗ばんで気持ち悪い。

のそのそと洗面所まで向かうと、鏡の中の自分に驚いた。


「うわ……化粧落ち放題……やば」


それこそパンダのような目の自分と視線がかち合うと、不意に昨日の自分を思い出してしまった。

いくら自覚がなかったからと言って、簡単に許してもらえることじゃない。
せめて誠意として、きちんと話をしなくちゃならない。
……それは、わかってるんだけど……。

自分を直視出来なくなって、鏡から顔を背けてそのままバスルームに入った。

頭からシャワーを掛けて洗い流しているときにすら、『ああ、これで今までのこと、全部綺麗に流れてしまえばいいのに』だなんて思ってしまう。

そんなこと。考えるだけ、ムダなのに。

きゅっと蛇口を閉めて、バスルームを出た。

出掛ける予定も気分もないわたしは、部屋着を纏ってキッチンへ。
風邪引いてたから、今日は葛湯でも飲もう。

小袋を開けて、カップに入れる。
サラサラと落ちていく粉を眺めて、ぼんやりとまた考え始める。

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