イジワル上司に恋をして
「……さすがにね? 具体的に何を考えてるとかまではわかんないよ? でも、そこはおれが勝手に想像しちゃって」
〝隠し事(ウソ)がバレた〟ときの、居心地の悪い心境が、その〝感覚〟の正体だ――。
それがわかると、ますます心が落ち着かなくて。
思わず西嶋さんから目を逸らして、パッと俯くように頭を下げた。
もちろん、計算とか、わかっていて、とか。
そんな打算でしていたわけじゃない。
だけど、事実、西嶋さんがそう感じて傷ついたのなら……それは、わたしに非があって、『わざとじゃない』だなんて言い訳も出来るわけがない。
……けど、『ごめんなさい』だなんて簡単に謝ってしまえば、全てを認めることになる。
この期に及んで……って思われるとは思うけど。それでも、わたしの中では、まだわからない部分もあるから、単純に謝罪の言葉を口にも出来ない。
わたしの勝手なエゴ。
それのせいで、なにも言えないでいるわたしを一度も責めることなく……。
西嶋さんは、また、カップを両手で温めるような仕草で手に取った。
そして、ミルクティに向かって話掛けるかのように声を漏らす。
「2度目に職場に顔を出したときに、感じたんだよね。男同士の直感、とでも言うのかな。あの人はおそらく、おれにとってジャマな存在になる……って」
「あの人」? ……っていうのは、黒川のこと……だよね?
2度目に、ってことは、あのわたしにはわけわかんない会話をしていたときのこと? あのときから西嶋さんは、わたしの戸惑いの思考に気付いてたの?
「で、それが昨日、確信に変わったんだけどね」
「……え?」