イジワル上司に恋をして
「いらない同情してんじゃねぇよ」
ど、同情?!
低めのトーンで言われると、間近ということもあって、嫌でも萎縮してしまう。
肩を竦めながら、なんとか黒川を見上げながら反論する。
「そ、そんなんじゃないし!」
「は? だったらなんだっていうんだよ。この間の話で可哀想にでも思ったんだろ? じゃなきゃ、オマエからわざわざオレの手なんか掴まねぇだろ」
「それはアンタが急に……!」
「同情じゃなきゃなんだって言うんだ? 自分は優しいカレシがいるくせに」
……こんな壁ドン嫌だ。
キッと睨みつけるように目だけを黒川に向けるけど、本当は怖いやら悔しいやらいろんな感情が入り乱れてるから、ちょっと涙目。
だって、同情なんかじゃない。
そんな言葉まるで頭になかったし、言われたってピンとこない。
そんなことよりも、わたしの存在を無いもののように扱われた方がよっぽど事件だったんだから。
背に壁を感じながら、反抗的な目だけを向ける。
すると、ヤツはさらに苛立った様子で嘲笑うように言い捨てた。
「カレシ放って、ほんの少し弱味見せたオトコの傷舐めんの?」
「――カレシじゃないし……!」
それには思わず即答した。
なんなの、さっきから!
カレシカレシって、別に関係ないじゃない!
息まいて、『言ってやった』と黒川をこれでもかと凄んで見てみたら、ヤツの反応が思ってたものと違ってた。