イジワル上司に恋をして

そ、そうなのか……。西嶋さんも、〝悪かったり〟するのかな……。
確かに、一瞬迫るような素振りをわざと見せられた時は怖かったけど……けど、なんだかんだ言っても西嶋さんはそういう人じゃないと思う。

……アイツは、確かに〝悪い男〟に属するんだろうけど。

美優ちゃんとか香耶さんとかを未だに騙し続けてるし。
あの二面性、相当のワルだよ。……でも、アイツはアイツなりに色々――。


「そういう難しい顔も最近よくしてますけど、そんなに微妙な感じなんですか?」


いつの間にかからかうような雰囲気もなく、美優ちゃんが真剣な顔をして尋ねてきた。
わたしは少し間を置いてから、ぽつりと言った。


「……微妙……っていうか、そもそもよくわかんないことが多すぎて」


アイツはなぜ、今朝の態度が変わってたの?

なんでキスしたの? それも一度じゃない。二度も、三度も。
からかってんの? だとしたら、なんでそんな相手に自分の過去をあんなカオして話したの?

どうして、仕事柄よく見る涙をわたしが流したときに、震えるようにあんな声で拭っていったの……?


疑問を上げればキリがない。


「へぇ……なかなか心を曝け出してくれないタイプなんですね。でも、鈴原さんは好きなんでしょ?」

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