イジワル上司に恋をして
「オレが泣かせてるみたいだろ?」


『……そんな顔するな。不安なら言えよ』
『……不安だよ。だって、気持ちとか考えてることとか、全然わからないもん……』
『これでも、オレの気持ち、わかんないか……?』


突然引き寄せられた腰、密着する体。
驚いて顔を上げればそこには、吐息が掛かるほどの近さにある綺麗な顔。
その近距離で、お互い口を閉ざして見つめ合う。それから、ゆっくりと……。


ブーッブーッブーッ。

……え? なに、この状況でこの音……。
これ以上邪魔しないでよ……。


「……る、さいっ……」


自分の寝言で起きる20前半の女子なんて、いるんだろうか。
さらに……フローリングに頭を打って目覚めるなんて。

ぱちりと開けた目に映るのは、いつもと同じ、自分の部屋の天井。
けど、なぜか寝起きのはずのわたしの心臓はドクドクいってて。頭をフローリングに落としたまんま、もう一回目を閉じる。

珍しく、まだ覚えてるさっきまで見ていた夢。

『不安だ』と、素直に泣きごとを言ってた夢の中のわたし。
それを甘い雰囲気で受け止めてくれたのが……くろか――。

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