イジワル上司に恋をして
「キミが傍にいてくれたら大丈夫そうだね」
*
――結局。あのあとはほとんど会話もせず。
向こうが忙しそうっていうのもあるけど、敢えてわたしも黒川の方を見ないようにしてたからかもしれない。
翌日の今日は、シフトが休み。
ソファに座りながら、朝の一杯を飲みつつ思い出す。
『なの花』
その一度だけの声が耳からこびりついて離れない。
昨日から、何度も何度もそれを繰り返していると言うのに免疫もつかない。未だにボッと顔が熱くなる。
きっと原因は名前だけじゃない。
『仕事が向いてる』とかって、冗談じゃなくて本当に褒められたからだ。
「はー」と息を吐き、どうにか気持ちを落ち着ける。
本当に調子狂う。
それもこれも……黒川が最近少しずつ、違う反応をするからだ。
前までは100パーセント毒舌。容赦なく刺してきたアイツが。
最近では、目を……いや。心を奪われるような笑顔と言葉を投げてくる。
それが果たして、計算なのか、無自覚なのかはわたしなんかにはさっぱりだ。
だけど、どちらにしても……そんなギャップを見せつけられると……。
「気持ちが……大きくなっちゃうでしょーが。暴君上司……」
このまま、本当に好きになっちゃうじゃんか。
……〝本当に〟ってなんだ。
〝好き〟は〝好き〟で、それはきっともう変わらなくて、事実なのに。
「……いや! わたしは、あの素直な方が好きなわけで! 悪魔の方は好きでもなんでもないっ」
誰もいない部屋に響くのは自分の声だけ。
言ったあと、当然誰からもなにからも反応がなくて、溜め息だけが漏れる。
素直な方とか悪魔の方とか。
そんなこと色々考えたって、結局は一人の男の話じゃん。
休みの日まで考えるほど、ハマってんじゃん。
「……はぁ」
もう何度目なのかわからない溜め息とともに、カップに入った温いお茶を喉に流し込んだ。
――結局。あのあとはほとんど会話もせず。
向こうが忙しそうっていうのもあるけど、敢えてわたしも黒川の方を見ないようにしてたからかもしれない。
翌日の今日は、シフトが休み。
ソファに座りながら、朝の一杯を飲みつつ思い出す。
『なの花』
その一度だけの声が耳からこびりついて離れない。
昨日から、何度も何度もそれを繰り返していると言うのに免疫もつかない。未だにボッと顔が熱くなる。
きっと原因は名前だけじゃない。
『仕事が向いてる』とかって、冗談じゃなくて本当に褒められたからだ。
「はー」と息を吐き、どうにか気持ちを落ち着ける。
本当に調子狂う。
それもこれも……黒川が最近少しずつ、違う反応をするからだ。
前までは100パーセント毒舌。容赦なく刺してきたアイツが。
最近では、目を……いや。心を奪われるような笑顔と言葉を投げてくる。
それが果たして、計算なのか、無自覚なのかはわたしなんかにはさっぱりだ。
だけど、どちらにしても……そんなギャップを見せつけられると……。
「気持ちが……大きくなっちゃうでしょーが。暴君上司……」
このまま、本当に好きになっちゃうじゃんか。
……〝本当に〟ってなんだ。
〝好き〟は〝好き〟で、それはきっともう変わらなくて、事実なのに。
「……いや! わたしは、あの素直な方が好きなわけで! 悪魔の方は好きでもなんでもないっ」
誰もいない部屋に響くのは自分の声だけ。
言ったあと、当然誰からもなにからも反応がなくて、溜め息だけが漏れる。
素直な方とか悪魔の方とか。
そんなこと色々考えたって、結局は一人の男の話じゃん。
休みの日まで考えるほど、ハマってんじゃん。
「……はぁ」
もう何度目なのかわからない溜め息とともに、カップに入った温いお茶を喉に流し込んだ。