イジワル上司に恋をして
「いらっしゃいま……」
「お疲れさま」
「西嶋さん?!」
店内の整頓をしつつ、足音のするほうへと顔を向ければまさかの西嶋さん。
な、なんで??
軽くパニクるわたしを見て、くすくすと彼は笑う。
「驚かせちゃったね。いや、昨日、『今日は仕事だ』って聞いたからちょっとね」
「え? あぁ……」
いやいや! 今日出勤って聞いたから来た、って、それ、具体的理由になってないような?
それこそ、西嶋さんは休みって言ってたのに。わざわざここに来るなんて。
明らかに動揺しちゃって、なにも言葉が繋げられない。
ジーンズにTシャツという、ラフだけどオシャレに着こなしてる西嶋さんを呆然と見つめる。
「もうすぐ終わるよね? ちょっとだけ、時間貰えない?」
「へ?」
「っていうか、つきあって」
こ、こんな強引な西嶋さんって初めてかも……。
その満面の笑みが、『断らせないよ?』みたいなのが醸し出されてて、有無を言わさず……というのが窺える。
たじろぐわたしに構うことなく。
彼は軽く手を上げて、「じゃああとで」と出ていってしまった。
……な、なんだったんだろう。
ていうか、なにがあるんだろう。
ややしばらく、西嶋さんが出ていった出口を見つめてボーッと突っ立つ。
ハッと我に返って時計を見たら閉店時間を過ぎていて、慌てて看板をクローズにして仕事に戻った。