イジワル上司に恋をして

「オレが気付いたのは、結構経ってから。それ知って、すぐに手を切った。それからは顔を合わせてなかった」
「じゃあ、今回は偶然再会して……?」
「……初めは『なんてツイてねーんだ』って思ったけどな」


わたしも初めはそう思ってた。
偶然に元カノと再会とかって、ある種運命の再会みたいな妄想までしそうになったほど。
しかも相手は美人だし、コイツと並んでたら絵になるし……ってそれはどうでもいいか。

そう。でも、それが〝偶然〟じゃなかったって修哉さんに聞いたから。


「その写真の中で、一番身なりがイイ男がいる。そこそこ稼いで、それなりに見た目もいい方なんじゃねぇの? その男に捨てられたのが最近の話」
「えっ」


今度声を上げたのはわたしの方。
けれど、黒川は当然優しくないオトコだから、わたしの声を無視して言葉を連ねていく。


「その原因は昔と変わってないからだろ。ちょっと自分好みだとすぐ手を出す」
「だけど、何のためにあなたに」
「振られたオトコに当てつけで見せつけたかったってとこか……アイツのお眼鏡にかなうオトコが周りにいないときに、たまたま修哉に会ったんだろ。で、修哉がダメなら……って、短絡思考のアイツが考えつきそうなことだ」
「さ……サイテー……」


それも思わず口から出てしまった。

最低。最悪。女の風上にも置けない人!
やっぱり美人過ぎると、ちょっとネジ緩んじゃうのかなぁ?!
わたしみたいな平凡女子とは違って、ちやほやされてきてるだろうしね! そういう感覚麻痺しちゃうのかな!

あ、でも、香耶さんとか、修哉さんの彼女さんとか。素敵な人は素敵なわけだし!
やっぱ、吉原さんが特別なんだ。うん。


「女の意地っていうのは怖いな……?」

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