イジワル上司に恋をして
突然同じ高さの視線になると、目のやり場に困る。
さっきネクタイを緩めた黒川はいつの間にか第二ボタンまで緩めていて、喉のラインからちらりと鎖骨のあたりが覗いてる。
ああっ! もう! 無駄に色気もありすぎなんだってば!
毒舌上司のたかだかシャツが乱れた姿で動揺するなんて、わたし、だいぶヘンタイになってる気が!
ボッと顔を赤くしてしまったけど、夜のおかげできっとバレないはず。
手早く写真を回収し終えると、じっと黒川を見つめた。
「……なに」
「や……別に。あ、コレ……お返し……します」
恐る恐る差し出す手。
その手にあるものを受け取るどころか、手元を見ずに。黒川はずっとわたしの顔を見る。
だ、だって、わたしが持ってるのは変な話だし。
ここにはわたしと黒川しかいないし! 嫌味とかそんなんじゃないけど、他にやり場ないじゃない!
「いらねぇよ。こんなもん。あそこに捨ててこいよ」
「えっ」
視線で指された方向には大きなゴミバケツ。
確かにわたしの方が近いんだけど……わたしが捨てるの? コレ……。
渋々立ち上がり、微妙な気持ちでそれを指示通りにごみ箱に捨てた。
くるりと方向転換すると、いつの間にか目の前に立ってた黒川にびっくりする。
「な、なにっ……」
「残業。責任もって付き合え」
「はっ、はぁ?! なんでわたしが責任持たなきゃなんないの」
「元カレの責任は、元カノのオマエが取るっつーのが筋だろ」
「元、カレ……?!」
グイッと腕を掴まれて、引き摺るようにわたしを連れながらおかしなことを言う。
元カレって……西嶋さんのことだよね……?
なんで西嶋さんのせいで残業って話になってんの? 絶対そんなわけないじゃない。