イジワル上司に恋をして

短めのキスから解放されたわたしは、浅く息を吐いて口にする。


「……理想なんて、どっかの性悪上司がぶち壊しましたけど」


イケメンなのに、超性格悪くて、妄想も出来なかった最悪な上司。


「……でも、こんな現実も悪くないな。……なんて」
「……オマエ、そういうことを無自覚で言うな。プランナー以外に少しオトコのことも勉強しろ」
「えっ……あ、んッ……!!」


少し照れた顔を隠すように、黒川はもう一度わたしの口を塞ぐ。


妄想の世界よりも、胸を締め付けられる感覚をわたしの中に落としたあなたに。
その波紋が静かに消えて行っても、心の中にずっと浸透したままだから。


一分、一秒ごとに変化するのをお互いにずっと、見ていけたら。


それがきっと、わたしたちの恋愛の理想だ。







*おわり*

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