イジワル上司に恋をして
「見せて」
「え……あの、自分で」
「あー。結構擦り剥いてるな……コレも派手に破けてるけど、替えあるの?」
「や、あの、あ、あります……けどっ」
この男が! 出会ってから今まで憎まれ口しか叩かないようなコイツが!
わたしに膝まづくようにして、わたしの足をーー!!!!
派手に破けたストッキングの穴から、容易に絆創膏を貼ることが出来たみたいで、黒川はわたしのことなんかお構いなしで、手早く処置を終える。
悶絶しそうなこの状況に、もう頭の中が大パニック。当然わたしは、冷静な判断もなにも出来ずに顔を真っ赤にして黒川のつむじを見るだけ。
すると、ぽつりと足元から声が聞こえた。
「……消毒もすればよかった?」
「はい……?」
その言葉と、さっきよりも少し低い声にぞわりとする。
ま、まさか……。
「ご希望は、傷口にくちづけるやり方?」
で、デビル――!
気付いたときにはすでに豹変後。
わたしの足に手を添えたまま、見上げてる顔が、いつもの悪い表情(かお)だ。
「だーっ! へ、ヘンタイ!」
「バカ言え。そりゃオマエだろ」
「そそそそ、そこまで想像なんかしてませんっ」
「へー」
危うく蹴り上げそうになったのをどうにか堪えて、わたしは椅子ごと飛び退いて息を荒くする。
動物が敵を威嚇するような勢いのわたしを、今度は立ち上がって冷ややかな目で見下ろした。