イジワル上司に恋をして

……あ。やばい。今、わたし、すごい恥ずかしい。


「あっあの、その……、なんか、すいません……」
「えぇ? なんで謝るの? 鈴原さんて相変わらず面白い」
「あっ相変わらず?!」
「あー、ごめん。その、大学のときからちょっと……そう思ってた」


いっ、痛い! それはとっても痛いです!!
そりゃ、「面白い」人扱いだもん。恋愛に発展するわけないよね……。まして、自分でなにもしなかったら可能性もないよ。

まあ、でも、そうよ。
べつに、彼女になれなくても良かったわけだし! あの頃のわたしは、癒されてればそれで満足だったし!

それに……。


「まだ、由美ちゃんとは仲いいの?」


西嶋さんは、わたしよりも由美のこと、気に入ってたって知ってるし。


「あー、はい。ときどき飲みに行きますよ」
「そうなんだ! 元気そう?」
「……はい」


一瞬迷ってしまったのは、由美が結婚することを言おうか言うまいか。
別にこの期に及んで、秘密にしてどうこうとか、そんなこと思ったわけじゃないけど。
……ていうか、そんなこと、元々出来るような性格じゃないけどさ。

ただ……ただ。ちょっとでも、傷ついたりしちゃうのかな? と、思っただけで……。


西嶋さんには笑顔を向けて、心の中では別の表情で接するわたし。

だけど、そんなの、誰も気付かないよね。


「そっかー。あ、鈴原さんは今日予定ある? もしよかったら――」
「……え?」


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