イジワル上司に恋をして
そうだった! コレ! 西嶋さんの連絡先っ!
わたしのアドレスとかも教えたけど、もしかしたら向こうも待ってるかもしれないのに!
今日の出来事を思い出して、きゅんと胸をときめかせる。
こんなことなんて滅多にないし! これが恋人関係に発展するなんて、そこまで本気で思ってなんかいないけどさ。
だけど、ちょっとくらい、期待……っていうか、想像していたようなことがあってもおかしくないのかな? なんて思ったりして。
そうそう。普段――最近なら、さっきまでいたアイツとかで疲れることが多いし。なんにも盛り上がることのなかったわたしに可哀想になった神様がくれた、ちょっとした“ご褒美”的な?
うんうん、と小さく何度も頷きながら、都合のいい解釈を重ねたわたしはもう一度、手の名刺に視線を落とす。
「“株式会社air life”……どんな仕事なんだろ」
左上の会社名を口にして、少し考えてみたけど、ピンとはこない。
商品企画販売事業部、西嶋光輝……本当に、西嶋さんの名刺だよね、コレ。夢じゃないよね。
両手に持った名刺を、蛍光灯にかざすようにして眺める。
薄らと透けて見える裏面は、別れ際に西嶋さんが書いて行ったアドレス。
裏返してその字を見ると、ボールペンを走らせてたときの西嶋さんの姿が浮かんでくる。