イジワル上司に恋をして
「手伝ってくれ」
＊

翌日のわたしは、いつもにも増して、ぼーっとしてたと思う。

週末の金曜日だけど、やっぱりそんなに忙しくない持ち場だし、レジの中で両手を組んで、入口の方をぼんやりと眺めるだけ。

その眺めた先に見てたのは、昨日の西嶋さん。


嘘のような本当の話。
わたしの空想が作りだしたことじゃなくて、現実に起きてる話。

だって、ココにれっきとした“証拠”があるもん。


そうしてちらりとポケットから携帯を覗かせて、親指で撫でる。

昨日、残業して帰宅してからメールした。
帰り道もずーっとなんてメールしようか考えてたけど、結局まとまんなくて。

だから、なんの捻りもないメール。

【今日はすみませんでした。今、仕事から帰宅しました。西嶋さんも、お仕事頑張ってください。立ち寄って頂き、ありがとうございました】。


――業務メールかよ！　って、自分で突っ込みたくなるような堅苦しいメール。
取引先とか、職場の人とかにするような、可愛くもなんともないメールしか出来なかったのが悔やまれる。

ああ、せめて絵文字くらい入れればよかったのに！　自分のバカ！

ぎゅ、と携帯を握りしめて見つめてると、右側に気配を感じた。
ハッと気付いたときにはもう遅くて――。


「オイ、単細胞。なに難しい顔してんだよ」


で、出た！　面倒で疲れるヤツが！
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