イジワル上司に恋をして
*
「傘、お忘れですよ」
一軒目の居酒屋を出ようと、席を立ったときに、隣の男性がにこりとわたしの傘を手に取った。
「……あ! どうもありがとうございます」
ぺこりと大きくお辞儀をして、差し出された自分の傘を受け取る。顔を上げてその男性と目が合うと、またにこりと笑ってた。
優しい笑顔のひとだ……。
お酒もそこそこ入っていたわたしは、ぽわっとしたままそんなことを思い、停止する。
「あれ? なの花っ」
少し先で聞こえた由美の声で、わたしは再び動き出し、男性にお礼を告げて由美のもとへ駆けて行く。
「ごめん! 傘忘れて……」
「なの花、いっつもボーっとしてるから」
「別に『いつも』ってわけじゃ」
「はいはい。行くよ」
「えっ」
『支払いは?』
そういう目で、前を歩く由美を見る。由美はその視線に気づきもしないで外に出た。
「傘、お忘れですよ」
一軒目の居酒屋を出ようと、席を立ったときに、隣の男性がにこりとわたしの傘を手に取った。
「……あ! どうもありがとうございます」
ぺこりと大きくお辞儀をして、差し出された自分の傘を受け取る。顔を上げてその男性と目が合うと、またにこりと笑ってた。
優しい笑顔のひとだ……。
お酒もそこそこ入っていたわたしは、ぽわっとしたままそんなことを思い、停止する。
「あれ? なの花っ」
少し先で聞こえた由美の声で、わたしは再び動き出し、男性にお礼を告げて由美のもとへ駆けて行く。
「ごめん! 傘忘れて……」
「なの花、いっつもボーっとしてるから」
「別に『いつも』ってわけじゃ」
「はいはい。行くよ」
「えっ」
『支払いは?』
そういう目で、前を歩く由美を見る。由美はその視線に気づきもしないで外に出た。