イジワル上司に恋をして
「バカ?」
「はあ?!」
口を開けば『バカ』だの『イタイ』だの!
こっちは仮にも手伝ってる側なんだから、もーちょいなんかないのかね!
っつっても、コイツが優しくなるのも怖いけど!
手にしていた熨斗が、危うく破れそうなのをなんとかして、ひとつ呼吸をしてから張り直す。
「あなたに『バカ』だなんて言われる筋合いは――」
「“西嶋くん”。忘れてねぇ?」
「――――あぁっ!」
一生の不覚……!
こんな一大イベントを忘れてることも、それを指摘されたのがブラック上司だと言うことも!
「本物のバカだな、オマエ……」
呆れた、というよりは、憐れまれたような目で黒川に言われた。
お前がそんな目でわたしを見るなーっ。
大体、そっちの方が、普通以上に公私使い分けてる辺り、どんな理由があるか知らないけど可哀想すぎるわ!
威嚇するように黒川を睨みつけ、ハッと、それどころじゃないことに気付く。
こんなヤツはどうでもいい! 後回し!
それより、早く連絡しなきゃ! ああ、でもなんて? もう約束の時間には間に合わないし、時間を遅らせてもらう?
いやでも。今、始めたばかりの作業の、諸々チェックとかちゃんとしたいから――――……。