イジワル上司に恋をして

「ここは、全員やり方は同じか?」
「は……はぁ?」


突然の質問が、全くわけわかんない。
「やり方」ってなんのことだか見当もつかないし、まぁ本当、わたしと二人きりになれば話し方も雑よね!


「意味、不明なんですけど」


怪訝な顔をして聞き返すと、黒川はやっとカップを持ち上げながら、目を細めて言った。


「提供するドリンクの淹れ方のことだ」


「淹れ方」?

いきなりなにを言うかと思えば、仕事の話? なに? もしかして、今わたしに作らせたのって、なんかケチつけるため?!


「……一応マニュアルがあるみたいですけど」
「ふーん。『一応』ねぇ」
「……なんなんですか。言いたいことあるなら、ハッキリ言えばいいじゃないですか」


そーよ。いっつも言われたくないことまで、バッサリ切って捨てるように吐きまくるくせに。
なにここにきて、オブラートに包んだような、遠回りしたようなまわりくどいこと言ってんのよ。


半ばヤケになったわたしは、逆切れとも言えるような言い方で返した。

でも、冷静沈着の黒川は、眉ひとつ動かさず。
静かにカップを口につけ、コクリ、と喉を動かした。


「なるほどね」


……はあぁ?! なにが? ねぇ、なにが、「なるほど」なわけ?!
どうせまた嫌味のひとつでも飛ばしてくるんでしょーよ!


「ただ突っ立ってるだけの、使えねぇヤツ」


ほーら来た。あいにく、こっちもそれなりに経験と免疫ってもんが――。
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