イジワル上司に恋をして
「ミルクティ……!」
考えるのが楽しすぎて、そっちの世界に集中し過ぎてたわたし。
真横に気配を感じるのが、一瞬遅れてしまう。
「休憩とったばっかなのに、もう次の休憩のこと考えてんのかよ」
その声に全身を石にする。
ヤツがわたしの視界に入る場所へ、ゆっくりと足を進める。その視界の上の方に、ギリギリ黒川の顎が見え――それから、唇。
キスを思い出すのなんて、一瞬だ。
しかも、あんな強引な、オトコの力を感じるようなキスなんて……あいにく、経験したことないもので。
「ああ。その顔は――違うコトだな」
すごくいやらしい笑み! でも、それすらも嫌悪感抱かせないって、カッコイイ男はズルイ。不公平だ。
「ち、近くに寄らないでくださいねっ。はい! ここからこっちには入ってこないで!」
「小学生か、オマエは」
ダンッと一歩前に踏み出し、手を横に引いて必死に抵抗するわたしを一瞬でバッサリと切って捨てる。
わたしが今引いたばかりの“陣地”にずかずかと足を踏み入れる黒川は、昨日のように追い詰めてくる。
「で? 今度の妄想はどんなのだ?」
昨日の今日でこういうふうに迫られると、過剰反応してしまうのはわたしだけじゃないよね?!
あからさまに目を泳がせながら、わたしは笑えるくらいにどもりながら反抗した。
「ななななな、なんですかっ。べっ、べべつになにもっ」
「見え透いたウソを言うなよ、バカ。楽しそうな顔しやがって、わかりやすいんだっつーの」
たっ……楽しそうな顔……。わたしって、本当にわかりやすいんだなぁ。ちょっとヘコむ。