イジワル上司に恋をして
「せいぜい、お茶出しで貢献してくれよな」
「!」
スタスタと立ち去る背中を見ることも出来ず。
わたしの頭と心はぐっちゃぐちゃ。
だって。
今のって、“肯定”ってことだよね? わたしが思いついたアイデアを、否定しなかったよね?
でも、「お茶出しで貢献」って、ちょっとハードル高い言い方じゃない? そんな大層な仕事……っていうか、アイツが納得するような仕事が出来る気が全くしないんですけど。
そんな仕事のやりがいみたいなものや、不安感なんて、今まで感じたことなんかないから。
――それに。
「……アイツ、笑った」
あの嫌味な黒川が。性格悪い男が。したたかヤローが。
『フッ』って、裏を感じさせない素の笑顔で。
右手を心臓にあてて、未だに動けずに棒立ちしてた。
ドクドクドクと逸る心臓の音。
――いや! いやいやいや! なにをそんなにドキドキしてんだ、わたし!
ハッとして、勢いよく顔をあげると両手をぶんぶんと振って冷静な自分を呼び戻す。
その不可解な動きを誰にも見られなくて良かった、と息を吐く。
……特に、アイツに。