幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜
涼は昔からにんじんがキライで。
カレーや肉じゃがに入っているにんじんはかろうじて食べるけど、にんじんのグラッセだけは絶対に食べない。
甘いにんじんがどうしても苦手らしい。
「だいたいさ、こいつが存在する意味ないよな」
あたしのプレートにまだひとつだけ残っているにんじんを指差しながら、涼は言う。
たしかにあたしも好きではないけどさ。
「本当のこと言うとうまくないだろ?」
「えっ?…おいしいし」
「絶対うまくねーし」
「だからおいしいってば」
そう言いながら残りのひとつをフォークに刺して口に運ぶと、独特の甘みで口の中がいっぱいになった。