幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜
一度崩れてしまった空気は結局元には戻らなかった。
「そろそろ帰ろっか」
みのりの一言で、うん…と小さく頷くと俺たちが先に川辺を後にした。
自転車で家に戻っている間も、涼と俺にはたいした会話もないままで。
帰り道はとても静かに時間が流れていた。
だけど、家に着き携帯を取りに部屋にあがってきた涼が突然俺にポツリとつぶやいた。
「俺、わざと忘れたんだ、これ」
握りしめた携帯を見つめ、ため息をつく涼。
「わざと?」
驚きながら俺はそう答えた。
そしたら少し間が空いて、涼がまた口を開いた。
「俺さ、岡崎のこと好きなのかな?」
「えっ?」
「なんかもう…よく分からないんだ」
涼は携帯を見つめたまま、珍しく弱気な声でつぶやくようにそう言った。