幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜




「ごめん、花火始まる前にトイレ行ってもいいかな?」


花火が始まる15分程前だった。

人混みの中を歩いていると公衆トイレを見つけてあたしは真鍋にそう言った。



「いいに決まってんじゃん、俺このへんで待ってるよ。あ、急がなくていいからな、浴衣なんだし」


真鍋はニコッと笑いながらあたしを見て。


「いってらっしゃい」


そう言って優しく笑ってくれた。


うん、と頷きすぐにトイレに向かうと祭りのせいかトイレには少し列が出来ていた。


混み合ってるなぁ…

花火、始まっちゃうじゃん…


列の前の方を見ていた…その時。


「みのりちゃん?」


背後から聞こえた声にビックリして振り返った。


「あ……岡崎さん…」


そこにいたのは岡崎さんだった。


長い手足が強調されるようなノースリーブのシャツとミニスカート。


同い年には見えないくらいとても大人っぽい。



「みのりちゃん誰と来てるの?」

「あぁ…真鍋と来てる」

「そうなんだー⁉︎私も涼くんと来てるんだー!」

「そう…」


さっき見たし知ってるよ。

聞かなくても分かってるし。


「みのりちゃんも真鍋くんと付き合ってるの?」

「え?別にそんなんじゃ…」


言いながら、何だか悔しくなるのは何故なんだろう。

みのりちゃんも、って一緒にしないでよ。


そう思った時、長い列がようやく進み。


「あ、空いたみたい」


新しく空いたトイレに急いで入った。


早く出よう。

早く出なきゃ、また顔を合わせることになる。


岡崎さんとまた話すことになるのが嫌で…あたしは急いでトイレを出るとすぐに手洗い場に向かった。


< 285 / 349 >

この作品をシェア

pagetop