幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜
「なぁ!めちゃくちゃ綺麗じゃね?」
真鍋の弾むように嬉しそうな声。
だからこそ、苦しかった。
笑顔の真鍋の隣にいるのが、たまらなく苦しかった。
みんなが花火を見上げる中で、あたしだけがうつむいていた。
もう我慢しても…涙が止まらなかった。
「た…ちばな?」
真鍋はそんなあたしに気付いたのか、戸惑うように一瞬黙り込んだ。
そして…
「ちょっと向こう行こうか」
見物客で賑わう人混みを避けるように、ひと気の少ない方向へと引っ張っていってくれた。
たくさんの花火が打ち上がる空を、あたしたちだけ見上げることもないまま。
静かに、どんどん人混みをすり抜けていった。
「足、大丈夫?」
やっと真鍋の足が止まったのは、来た時と同じ待ち合わせ場所だった。
こんなはずじゃなかったのに。
さっきよりも遠くで聞こえる花火の音が、あたしたちに寂しく響いてきていた。