幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜



「涼兄!」


8月最後の日。

長かった夏休みが終わろうとしていたその日、コンビニ帰りの俺にちょうど隣の家から出て来たひかるが声を掛けてきた。



「お前真っ黒だなー、部活焼けか?」

「そっ!」


ひかるはそう言うとTシャツの袖をぺろっとめくり、まるでポッキー状態の肌を見せてきた。


「焼けすぎだな、マジで」

「歯が白く見えるっしょ?」


俺がそう言うとひかるは言いながらニッと笑って。


「涼兄は今年はあんまり焼けてないね」


そう言って俺を見た。


「そうか?」

「今年の夏休みは…姉ちゃんとはほとんど遊んでなかったもんね」

「…そうだな」


何だか寂しそうに見えるひかるの顔に、俺も寂しいような…変な気分になっていく。



「俺、姉ちゃんと涼兄が付き合ったらいいのにって思ってたんだ」

「ははっ、何だよいきなり」

「俺だけじゃないよ?母さんも父さんも言ってた。姉ちゃんと涼兄があんまり遊ばなくなってから姉ちゃんが変わった気がするって。だから…やっぱり涼兄と一緒にいる時の姉ちゃんの方が俺は好き」


ひかるはそう言うと一瞬うつむいて。


「って、何言ってんだろ俺。ごめんね!変な話して。俺もコンビニ行ってこよっと」


すぐに自転車に乗り走り出して行った。

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