幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜
「おっす」
「おはよ」
翌朝の二学期初日。
8時ちょうどに家の前に出るとみのりがもう待っていた。
「夏休みあっという間だったね」
「そうだな」
走り出した、俺たちの自転車。
「今日から9月かぁ。暑いのは嫌だけど夏が終わるのはちょっと寂しいよね」
「うん、分かる、それ」
珍しくみのりが喋るから、俺はそれに答えるような形が続いて。
俺は何だかそれが嬉しかった。
普通に話せることがただ嬉しくて。
夏休み前のみのりとは違うような気がして。
ただそれだけで…嬉しかった。
「あ、涼」
「ん?」
だけど…
「あのね、あたし真鍋と付き合ったんだ」
赤信号で止まった交差点。
みのりの言葉に俺はひどく動揺した。
「知ってる。ハルから聞いてたし」
「そっか…。それでね、これからは」
信号が青に変わり、また走り出した自転車。
そしてみのりの言葉を聞き終えた時、いつもの場所に岡崎の姿を見つけた。
「じゃああたし、先行くから」
岡崎と合流する前に、みのりはスピードをあげて走り出していく。
「…なんだよ…それ」
その背中を見つめながら、小さくこぼれた声。
これからは、もう一緒に行くのはやめようって何だよ…
お互い彼氏と彼女に悪いじゃん、って何なんだよ…
遠ざかって行く後ろ姿に胸が苦しくなった。
みのりが離れていく。
もっともっと遠くにいってしまう。
「涼くん、おはよ!」
「おはよう」
‘‘本当にこれでいいのか?’’
今さらハルに言われた言葉を思い出す。
いいも何も…もう遅い。
もう…どうにもなんねーじゃねえか。