幼なじみ〜近くて遠い恋の距離〜
生ぬるく感じていた風が、いつからか涼しくなり始めた10月。
夏が過ぎ秋が訪れると日が暮れるのも少しずつ早くなってきた。
「みのり!ここ、お願い」
「オッケー!赤でいいんだよね?」
茜色の夕陽が差し込む放課後の教室。
文化祭の準備で看板作りの役割を任されたあたしとアリサちゃんは下書きの済んだ看板にペンキで色を塗っていた。
「こっち手伝ってー!」
「了解!」
「サボんなよなー!しっかりやれよ」
周りも準備に追われている。
教室の中や廊下も放課後なのに騒がしい空気だった。
「はぁっ、腰痛い…みのりは大丈夫?」
「あたしも痛いかも。ちょっと休憩しよっか」
ずっと屈むような姿勢でペンキ塗りをしていたあたし達はゆっくりと立ち上がると、グンと伸びをした。
アリサちゃんが窓際の方へ歩いていくから、あたしも自然とそっちに向かって。
窓の向こうに見えるグラウンドをふたりでぼんやりと見ていた。