ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
「馬鹿。俺をお前と一緒にすんな」

「ますます酷い!」

翔太と言い争っていると、

「翔太、気持ちは分かるけど、イチャイチャするのはそこら辺にしてくれる?」

「もう、見てるのも腹いっぱいだからさ」

二人とも何だか優しい目であたし達を見ている。

何でそんな顔をしているんだろう?

どこが微笑ましいの!?

ていうか、雅人。腹いっぱいって……


「雅人、いつの間に食べ物食べたの?」

「…は?」

訳が分からないという顔をされた。

「だってさっき、お腹いっぱいって言ったでしょ?」

すると空気が凍った。

「え。ちょっと、皆さん? どうしたの?」

話しかけると、ポツリポツリと返答が返ってきた。

「…やっぱ、天然だな」

「…ほんと、最強ね」

翔太に至っては無言だった。


「も、もう、戦おう! 体を動かさないとやってられねぇ!」

「ほんと、テストでストレス溜まってるのよ! ね、二人ともいいでしょう?」

2人が急かすようにそう言った。

「そうだな」

由良は? と美玲に尋ねられる。

「いいけど……」

でも、とあたしは言葉を続けた。

「でも、あたしは皆に怪我をさせたくないよ…」

あの時みたいに、傷つけたくないよ。

『ゆらちゃん、こわい』

あの日の記憶が蘇りそうになる。

皆を傷つけるのが、失うのが、怖い。

堪らなく、怖いよ。
< 112 / 170 >

この作品をシェア

pagetop