ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
「ピンポイントで言うな! っていうか、誰が戦ってる間にイチャイチャするか!」

翔太は怒っていたが、よく分からない。

「え、イチャイチャするって、翔太と誰がイチャイチャするの?」


あたしが問うたその瞬間、空気が凍った。

時間が止まったような感覚さえあった。

誰一人として喋らない。全員目を見開いて停止している。


「あれ、どうしたの?」

問いかけても固まったまま、瞬きを繰り返している。

全然答えてくれないので、放っておく。

本当に、誰といちゃつく気なんだろう?

美玲とイチャつくのかな? いや、それは雅人が何としてでも止めるだろうから、それはないと思うけど。

っていうことは、まさか…!?


「まさか、雅人と…?」

翔太と、雅人が、イチャイチャ・・・!?

想像すると寒気がした。

ちょっと、何か、嫌だな…。


「んなわけあるか! このバカが!」

翔太に怒られた。

「馬鹿! 阿呆! マヌケ! 頭は超絶いいくせに、なんでそんなことを思いつく! お前の思考回路はどうなってるんだ、このド阿呆! 天然のレベルを超えてるだろうが、この馬鹿! 大馬鹿!」

なんだかすごく怒っているらしく、背後に黒いオーラが見えた。

「阿呆じゃないもん! ていうか、そんなに怒らなくても良くない?」

そんなに怒られることを言ったつもりはないけどなあ…?

あたしが戸惑っていると、翔太のオーラがまた一段と黒くなった。

「阿呆に決まってるだろうが! 大体、何で男の俺が雅人とイチャつかなくちゃいけないんだ! 戦っている間じゃなくてもイチャつきたくない! 大体、俺にそんな趣味はない! 誰が何と言おうと、絶対、断固拒否だ!」

すごい剣幕で言われた。眉間に深い深いしわが刻まれている。

あれ、そんなに怒ること…?

あたしが首を傾げていると、

「由良、勘弁してくれ、俺だって嫌だ。本気で嫌だ」

雅人が蒼白の顔で言った。ぶるぶると小刻みに顔が震えている。

そのままガシっとあたしの両肩を持った。

「由良、いいか、よく聞け。覚えろな。本気で、覚えろな。死ぬ気で、覚えろな。

いいか、俺が好きなのは男じゃなくて美玲だ。俺が好きなのは男じゃなくて美玲だ。俺が好きなのは男じゃなくて…」

雅人は真顔で、まるで呪文のように繰り返し呟いていた。
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