ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
雅人の唇の色がだんだん血の気を失い、青く変化しているのがあたしにも分かった。

これは、ただの氷じゃない。

翔太が創り出したものだから、きっと普通の氷よりも冷たいんだと思う。

このままじゃ低体温症になってしまうかもしれない。

「待ってて、雅人。今助けてあげるから」

翔太と美玲の方を見て、あたしは「"ファイア・ウォール"」と叫んだ。

炎の壁が、ぐるりとあたし達を囲む。

これで炎で隔離されたあたし達のところに、ダイアモンドダストは入ってこれない。


「大丈夫? 雅人」

これでその氷が溶ければいいけれど、生憎翔太の創り出した氷が溶けるほどの温度はない。

雅人が体調を悪くしたときのように、ブルブルと震えている。

早くどうにかしないと、まずい。

あたしは「"ファイア"」と呟いて、手で水を掬(すく)うように手を合わせる。

それと同時に小さな赤い炎があたしの手の上にぽうっと浮かんだ。

その手を雅人の方に向けて、ふうっと息を吹きかけた。

炎は消えることなくあたしの手をふわりと離れて、ふよふよと漂うと、雅人の氷漬けにされた手に移った。

じわりじわりと氷は溶けていき、10秒もしないうちに氷は溶け、雅人の体調も復活した。

「気分はどう?」

あたしが問いかけると、雅人はいつもの笑顔で笑ってくれた。

「あ、ありがとな由良…へっくし!」

雅人はくしゃみを一つすると鼻を啜った。風邪を引いたらしい。

「あとで美玲に風邪薬をもらった方がいいね。美玲の持ってる薬はよく効くし、体にもいいし」

魔法で治すよりも、魔法薬を使って治す方が、ずっと体にはいい。

「そうだな…へっくし!」

雅人のくしゃみに苦笑いをしていると、雅人が問うた。

「由良、これからどうすんだよ? 炎の壁、崩壊させるんだろうけど、翔太のことだ、その後すぐ攻撃があるかもしれねぇ…へっくし!」

「そうだね。まぁ、あたしに任せてくれたら大丈夫。考えはあるの」

「考え?…へっくし!」

「うん。……それより、大丈夫? 魔法、使える? 戦える?」

風邪の状態が酷いなら、それこそ棄権した方がいい。

無理をして戦わないといけないほど、肩を張った戦いじゃないし。

「大丈夫だ、心配な…えっくしょんな!」

「えくしょんなって何なの、えくしょんなって…」

もう苦笑いしかなかった。
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