ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
腕時計を見ると、会合が始まる時刻まであと一時間弱ってとこ。

今日の分の仕事も終わったし、早く本部へ戻ろう。

本部にいたら、もしかしたら翔太と偶然会えるかもしれない。

なんて、考えるあたしは乙女すぎ?

そう考えて、フッと笑みが零れた。笑み、というよりは呆れに近い吐息。

あたしが乙女なんて笑えるね。柄じゃないと自分でも思うよ。


でも、乙女でもいいかなって思うんだ。

だって、そのくらい好きなんだもん。

翔太の笑顔を思い出すと、つい頬が緩んでしまう。

さ、早く帰ろう。そう思って杖を掲げた。

「"モーメン…」

–––––ピピピッ

「ん?」

魔法を発動する瞬間、どうやらケータイが鳴った。

あ、正確にいうと、携帯型テレパシー遠隔送受信簡易化装置って言うんだ。魔力が動力源になっている装置で、結構便利なんだよ。

ケータイ、と呼ばれたり、テレパス、と呼ばれたり、その呼び方は様々。最近ではテレパスと呼ぶ人の方が多いのかもしれない。

それにこの音が鳴ったということは、相手は、

「はい」

『あぁ、私だ』

案の定、我らがご当主様だ。

「どうしました?」

お父様からの連絡なんて、嫌な予感しかしない。

それに大体内容は分かってる。


『新たな依頼が入った』

ほらね。そんなところだと思ったよ。

「内容は?」

あぁ、と暗い声が機械越しに聞こえる。

なんだか、すごく嫌な予感がする。

『臨海地域にヒュドラが出た』

「ひゅ、ヒュドラが!?」

あたしは耳を疑った。


ヒュドラ、というのは九つの首を持つ、獰猛な海蛇。

彼等の唾液に含まれる猛毒は、一瞬で人の命を奪い去る。


退治するのが厄介な魔物の一つ。
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