ド天然!?魔女っ子の秘密【side story】
『早急に退治を。 知っての通り、ヒュドラはかなり獰猛だ。並の隊員では歯が立たない上に、今はどの隊も出払っていて、誰もそこにいない。直ぐに被害が拡大するだろう』

誰もいない、なんて。


「分かりました。その地域の住民には…」

『避難勧告は出ている……今、町長から避難完了との連絡が入った。第1小隊が依頼を早く切り上げて帰って来るとの連絡もあるから、帰って来次第そちらに向かわせる。頼んだぞ』

「お任せください」


そこで会話は切れた。

隊員服のポケットにケータイをしまうと、そこから杖を取り出した。

ヒュドラ、か。厄介な相手だね。

特にあの毒は……瞬間移動で飛ぶ前に対策をしておかないと。

「"プロテクト"」

身体全体に防衛魔法をかけた。

これで一定の毒なら防ぐことが可能だ。

といっても、この魔法も万全ではないのだけれど。


臨海地域はとても自然豊かなリゾート地。

透明な海水と白い砂浜が有名な、この町の大事な観光資源だ。

それに、今はまだシーズンではないから観光客はほとんどいないのだけれど、そこで漁をして生活している人だって大勢いる。


その人達を、守りたい。

誰一人とて死なせやしない。


そのために強くなった。

そのために厳しい修行にも耐えてきた。

そうでしょう?


胸元のネックレスを握った。

大丈夫。私には帰る場所がある。


そう思ったときに頭に浮かんだ、翔太の顔。

私が擦り傷でもすればあれだけ過保護になるあの人のことだ。もしあたしが大怪我でも負えば、どんなことになるだろう。

きっと慌てふためくんだろうな、と容易に想像がつく。

慌てふためいて、すごくすごく、哀しい顔をするんだろうな。
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